開設から10年。 地域サッカーの拠点として進化を続ける「奈良県フットボールセンター」
奈良盆地のほぼ真ん中。四方を山並みに囲まれた美しい田園風景の中に、緑まぶしい人工芝のグラウンドがあります。奈良県のサッカーの拠点施設として2010年10月にオープンし、2020年に10周年を迎えた奈良県フットボールセンター(奈良県田原本町)です。
2018年には、開設当初は1面だったグラウンドを2面に増設。翌2019年には、当初から敷設していた人工芝ハイブリッドターフ「XP」をハイブリッドターフ「XP-mono」に張り替えが完了するなど、設備がますます充実。運営を担う奈良県サッカー協会の山口浩副会長に、施設の活用の様子をうかがいました。
高校の跡地を活用した、地域サッカーの拠点
「奈良県フットボールセンター」は、閉校した奈良県立志貴高校の跡地に誕生したサッカー場です。日本サッカー協会と奈良県の助成金を活用して県の遊休地に施設を整備し、民間組織である奈良県サッカー協会が主体的に運営を担うスタイルは全国的にもユニークだと思います。
奈良県はもともとサッカー場が少なく、まさに待ちに待ったグラウンドでした。以来、当協会に登録しているクラブチームを中心にさかんに利用され、特に土日は予約でいっぱいの状況が続いています。車でアクセスしやすいので、大阪や和歌山などからの利用も多く、広域で認知されています。
この拠点ができたおかげで、私たちもサッカースクールが安定して開催できるようになり、育成が活性化しました。ナイター設備があるので、夜間は40代、50代のシニアチームの利用が増えています。子どもから大人まで、奈良県のサッカー人口が増えてきたことを感じています。
天然芝に近いプレー性と、夏の高温化を防ぐ快適性
2019年4月に、設立して初めて人工芝の張り替えを行いました。張り替え資金は当初から積み立てていて、ほぼ予定通りのスケジュールです。 利用料金をいただいている以上、私たちには快適なプレー環境を提供する責任がありますから、これからも適切なメンテナンスを続けたいと思っています。
芝の選定にあたっては、協会の理事を中心に「人工芝選定委員会」を結成し、さまざまな角度から検討しました。今回導入した「XP-mono」は、前回の「XP」と比べても、芝の密度、クッション性、走った感じ、ボールの転がり方など、天然芝にますます近づいていると思います。
温度抑制効果のあるブラウンの樹脂チップ「レジフィル」も、選定の大きなポイントでした。従来の黒いゴムチップだと、真夏のグラウンドの足元の温度が相当上がることがありましたが、樹脂チップになってから暑さはずいぶんやわらぎました。芝にも天然芝さながらのベージュ色がところどころに混じっていて、見た目に爽やかなのもいいですね。張り替えを終えた2019年の夏、奈良県で「全国中学校サッカー大会」が開催されたのですが、この快適な芝で試合ができて本当によかったと思います。
はがした古い人工芝も有効活用しました。一部はグラウンド横のスペースに敷設し、気持ちよく体を動かせるウォーミングアップスペースになっています。さらに残った人工芝は、近隣の高校などに分割して寄贈しました。その際も、住ゴム産業さんでカットしていただいて、とても助かりました。 校庭の一角の人工芝でフットサルをしたり、ランニングをしたり……。 移設先の学校でとても喜ばれているようです。
サッカーの発展をうながす、人工芝の進化に期待
今年は「ハイブリッドターフ」の発売20周年と聞きました。 20年前といえば、私は高校サッカーの指導者でした。当時は土のグラウンドが当たり前で、まだまだ数が少なかった人工芝のグラウンドで練習するために、かなり遠方まで合宿に連れて行っていたことを思い出します。 今の人工芝とは比べものにならないほど固い芝でしたが、それでも、芝の上でサッカーできることがとても嬉しかったのを覚えています。
サッカーの醍醐味は、やはり天然芝でプレーすることです。 しかし、よほど大きな大会でなければそんな機会はありません。それが今では、これほど天然芝に近いフィーリングの人工芝で気軽に練習できる。これはサッカー界全体の大きな財産です。 実際、人工芝に慣れた世代はボールコントロールがうまい。人工芝とともに、これからもサッカーが進化することを願っています。
インタビュー実施:2020年2月